記憶学習

記憶学習はマシンがなくてもできる

記憶学習というと、枕のような外観の睡眠学習機であったり、キオークマンやトークマンtk-1などのマシンに人気があります。ヘッドフォンのようなグッズを使えば、自分の声が増幅されるので、深夜などで小さい声でしゃべっても大きく聞こえ、それだけ印象に残りやすくなるのでしょう。

ただ、それなら普通の音読と、そう変わらないような気もします。
まずは音読の効果を試してみて、それからこういったトークマンなどを購入しても遅くはないでしょう。

音読はたしかに記憶学習としては効果があります。目で見たことよりも、耳で聞いたことのほうが記憶に残りやすいからです。誰かに言われた一言が、何年たってもはっきり耳朶に残っているのは、誰でも経験があるのではないでしょうか。その意味では、学校の授業や予備校の講義、東進ハイスクールやネットでのe-ラーニングの収録映像を耳で聴くことは、とても効果的な勉強方法です。

さて記憶学習の原理を知ることは、受験生の勉強方法にとって不可欠です。
ただひたすら繰り返せばいいとか、復習しさえすれば長期記憶になりやすいという程度の知識だけでは、効果的な記憶術や暗記法はマスターできません。

そこで記憶の原理を、脳科学の観点から解説します。

記憶には階層がある

カナダの心理学者タルビングによれば、記憶は大きくわけて5階層あるそうです。これを「記憶システム相関」といいます。5つの階層は、大きく二分することができ、意識が伴わない潜在記憶と、つねに意識が伴う顕在記憶とがあります。記憶の5階層とは、以下のものです。

  1. 手続き記憶
  2. プライミング記憶
  3. 意味記憶
  4. 短期記憶
  5. エピソード記憶

このうち1〜3が潜在記憶、4と5が顕在記憶となります。
本当は並び方を逆にしてピラミッド状にしたほうが、わかりやすかったかもしれません。

動物の進化の過程もそうでうすし、人間の成長過程においても、まずは1の手続き記憶から発達していきます。これは体で覚える記憶。自転車の乗り方などですね。これは小脳などが関係しているので、海馬が未発達の3歳以前であっても、様々な技能を習得することができます。「ハイハイ」なんかも手続き記憶の一種です。これは無意識に発動するので、潜在記憶といいます。たとえば歩くときに、意識して体を動かす人はいません。なので「潜在」というわけです。

プライミング記憶は煩雑なので省きます。簡単に言うと、パソコンのキャッシュのようなもので、見えているものの解釈や状況の判断を迅速にする働きがあります。非宣言的記憶(非陳述記憶)の一種です。

意味記憶からが、受験生の勉強方法や記憶学習に関係する記憶となります。
3、4、5のうち、意味記憶とは知識記憶ともいい、これは丸暗記するような記憶です。短期記憶とは前頭葉でのワーキングメモリ。数秒から数分だけ保持するような記憶です。電話をかけるときだけ番号を覚えているような記憶になります。最後のエピソード記憶とは、経験にもとづいた記憶のこと。語呂合わせなどのように、イメージとか右脳を活用した記憶は、エピソード記憶ということになります。


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記憶学習を効果的にするには?

受験期間中の記憶学習においては、意味記憶、短期記憶、エピソード記憶が関係してきます。

動物は意味記憶どまりで、エピソード記憶は持たないといわれています。
つまり経験したことを覚えているのは、人間だけだということですね。

また人間においても、10歳あたりまでは意味記憶が得意とされています。専門的に言うと、意味記憶が臨界期なわけです。子供は九九や漢字などを、無条件で覚えてしまえるのも、意味記憶が得意だからです。「なぜそうなるのか?」といった論理的思考がなくても、覚えられる年代といえます。

ところが、その年代を過ぎると、だんだんエピソード記憶が優勢になっていきます。中学生くらいだと、まだ「移行期」と考えられるので、「丸暗記」の記憶学習は通用するかもしれません。

しかし高校生くらいになると、ほぼ完全にエピソード記憶が臨界期となるので、いぜんとして丸暗記主体の記憶学習をつづけていると、授業についていけなくなる危険があります。ましてや大学生や社会人にもなって、資格取得の勉強などをするときに、エピソード記憶を使わずに意味記憶(知識記憶)を主軸とした勉強をしていると、うまくいかないのは当然なのです。

高1以降になるとエピソード記憶が優勢になるので、英単語や漢字を覚えるときも、この脳の特性を活用すべきです。たとえば英単語なら接頭語や接尾語の意味を考えながら、推測する。あるいは同義語や反対語などでグループ分けして暗記する、ということです。漢字でも、部首や編の意味を考えながら覚えていくわけですね。

歴史の年号でも、たんに丸暗記しようとするのは、意味記憶だけで覚えようとする暴挙です。そうではなく、まずは世界史や日本史の各時代の流れを把握し、理解する。情景が浮かぶくらいまで教科書を流し読み(速読)するわけです。そのような土壌をつくっておいてから熟読に移行し、年号に目をむけていったときに、しぜんと暗記できるのです。

記憶学習の秘訣はたくさんある

受験生の勉強法に役立つ記憶学習の方法を列挙してみたいと思います。

  • ある程度、間隔を空けながら反復する
  • できるだけイメージや想像をしてみる
  • できるだけ経験してみる
  • 緊迫感を感じてみる

細かくいえば、運動や居眠り、場所の移動によってシータ(θ)波を発生させるとか、咀嚼するとか指を使うとか、いろいろあるでしょうが、それは他のページにゆずります。ここでは上記について解説したいと思います。

まず、これは勉強の王道ですが、繰り返してこそ短期記憶が長期記憶に昇格されるということ。ただし、無暗に繰り返しても、それは無駄な時間になる可能性があります。ある程度間隔を空けながら、繰り返してくことが重要です。その間に記憶が整理整頓されるからです。期間を置いた方が記憶しやすくなる現象を、レミニセンス効果といいます。

その日、授業で学んだことは、そのあとの休憩時間で復習するのがいいでしょう。それができなければ、自宅に帰ってから、あるいは寝るまでに1回は復習すると効果的です。

なぜならエビングハウスの忘却曲線によれば、たった20分たっただけでも42%も忘れることがわかっているからです。1日たつと74%も忘却してしまいます。そのため、その日のうちに復習することが、記憶の定着にとって大切なのです。ただ実験では、無味乾燥な、何の意味もない文字列を使っているので、理解を伴った記憶学習においては、もうちょっと緩やかな忘却曲線になるでしょうけれど・・・。

その日のうちに復習をしたら、翌日、そのまた翌日、1週間後、1か月後、3か月後、半年後というように、「ある程度の間隔」を置きながら復習を繰り返すことです。メタ記憶が発達している人は、記憶が薄れてきたという自覚があるので、しぜんと反復学習をするものです。そのような実感がわかない人は、復習による記憶学習をシステム化するとよいでしょう。

イメージや経験、緊迫感が記憶学習には有効!

イメージとは、いいかえると想像をめぐらすことです。これには右脳が関係しています。文字をそのまま丸暗記したり、文章をそのまま暗唱するような勉強法は、「言語中心」なので左脳勉強法です。しかし極力、イメージを取り入れることによって、左脳だけではなく右脳も連動させた「全脳的な学習法」が可能になります。

丸暗記とは中学生までの勉強法であり、高校生以上では通用しません。それはすでに解説しました。
丸暗記は脳内において、孤島です。それにたいしてイメージするということは、ほかの神経細胞(ニューロン)と手をつないで協力しあい、支えあっている状態。なので、一つの入力があるだけで連鎖反応的に思い出しやすいというメリットがあります。

過去に会った人の顔や声は思い出せるのに、名前が思い浮かばない・・・こんなことってよくありますよね。顔や声といったイメージは、お互いにシナプスを介して連結しているので思い出しやすいわけです。ところが名前というのは、その人の容姿とか声との関連性が薄いか、まったくない状態。そのために、顔や声は思い出せるけれど、名前の記憶がある神経細胞まで電気信号がいかないのです。

そのほか経験することは、イメージ記憶と似ています。
ひとつの経験は、多くの神経細胞どうしの連結が必要です。専門的には連合といいます。これが密になった状態が精緻化です。今朝食べたという経験ひとつとっても、食卓に並んだ色とりどりの食べ物、その味、匂い、歯ごたえ、満腹感、温度、湿度、椅子の座り具合、家族との会話の内容、テレビの内容などが複合して、記憶に定着しています。

ですから覚えたことは、友人や家族に説明したり、ブログに書いてみると効果的です。
そういえば、あの人に話したなとか、ブログに書いたなという経験とともに、覚えにくいものでも記憶にとどまるようになるからです。たったこれだけで、無味乾燥な事項はとくに、脳内での孤立をまぬがれます。

想像することも、自分で実際に経験することも、このように記憶の精緻化を伴っています。そのため覚えやすく、忘れにくいのです。しかも思い出しやすいという三拍子がそろっています。

付け加えれば、記憶学習にとっては、適度な緊迫感があると勉強がはかどります。
たとえば試験前になると、普段よりも集中できるという経験をしたことはないでしょうか?これは大脳辺縁系という場所にある扁桃体が活性化したために、すぐそばの海馬でLTP(長期増強)が起こり、記憶力や集中力がUPした証拠です。

そのほか軽い空腹感や、ちょっと肌寒いなという環境に身を置くことも、適度な緊迫感をもたらすので記憶学習には最適です。



■スイスイ英単語や歴史の年号を記憶できる秘訣とは?
>> 記憶術日本一の藤本憲幸氏が教える記憶術の極意! <<

後書き

以上、能率的な記憶学習の仕方を解説しました。そのほか記憶力が良くなる方法も別に存在します。つまり頭をよくする方法。このページでは、効果的な勉強法を解説しましたが、脳自体をバージョンアップさせるやり方です。本当は、この方法を習慣化して、それを土台として、このページに記載しているような効果的な記憶法を活用すべきです。頭をよくするには、運動や咀嚼、指先を使う、小説を読書するなど、たくさんの方法があります。頭を鍛えるには、体を鍛える・・・このような発想の転換が大切です。また頭の回転を速くするには速読や速聴の訓練やトレーニングも有効です。
記憶する方法としては、対象のものにできるだけ興味をもったり、趣味と関連させたりすることも有効です。得意科目は苦手科目よりは覚えやすいはずです。英語なら、教科書の英文を読むだけではなく、好きな洋画や映画を活用する方法も効果的です。
いまはネットでも、記憶術のサイトや記憶塾といったものがありますね。でも記憶の技術とかノウハウは、そんなに難しいものではありません。自宅で無料でもできるものです。記憶の仕組みがわかれば、記憶力強化の方法もわかります。
記憶するときはできるだけ五感を使うといいといわれますが、正確にいうと四感です。味覚は必要ないからです。視覚・聴覚・触覚・嗅覚・・・この4つが記憶学習においては大切です。触覚は手で書くことですね。嗅覚は何に役立つのか?と疑問に思う人がいるかもしれませんが、学習中にかいだ匂いをノンレム睡眠中にかげば、記憶の定着が促進されることが分かっています。これは脳科学の分野において、バラの香りを使った実験で確認されています。また勉強中にラベンダーの香りがただよえば、気持ちもやすらいでアルファ波やシータ波が発生しやすくなる効果も期待できます。